オーダースーツの裏地の選び方・組み合わせのポイントを解説
2023/10/31
オーダースーツ
オーダースーツを製作する際「裏地の選び方がわからない」「裏地の種類を知りたい」などの疑問や悩みを持つ方は多いのではないでしょうか。特に、オーダースーツが初めての方は、違いがわからないと感じるかもしれません。
オーダースーツ製作の際には、裏地の柄や色は自由に選択が可能です。ふとした瞬間に見える裏地はファッション性があるだけでなく、さまざまなメリットを得られます。
そこで本記事では、オーダースーツの裏地に関して、以下を解説します。
- 裏地の必要性
- 裏地の種類と選び方
- 組み合わせ例
裏地の種類や選び方のコツを事前に把握しておくと、納得できるオーダースーツ製作の助けとなるでしょう。
オーダースーツの裏地とは?
オーダースーツの裏地とは、その名の通り「オーダースーツの裏側に縫い付けられている生地」を指します。一部を除くほとんどのオーダースーツには裏地が付けられており、実際に手にすれば、誰もが裏地の存在に気づくでしょう。
オーダースーツの裏地はファッション性があるほか、スムーズな着脱やシルエット保持など長く愛用するための役割を果たしています。
オーダースーツは好みや着用シーンに合わせて表地やシルエット、オプションなどを選択でき、裏地もそのひとつです。スーツを着用している間は目立たないため、裏地を選択する際には「どれを選んでも一緒ではないか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、裏地も表地と同様に色や織り方、素材に違いがあります。ビジネスシーンに適したスーツの色は限られますが、裏地では色や柄の選択肢が広がるため個性を演出できます。裏地も妥協せず選択すれば、より理想のオーダースーツが手に入るでしょう。
オーダースーツの裏地の必要性
オーダースーツの裏地は、機能面やファッション性において重要な意味を持ちます。ここでは、裏地の必要性を以下5つの観点で解説します。
- 型崩れを防ぐ
- 着脱しやすい
- 汚れや変色を防ぐ
- ジャケットの透け防止
- ファッション性の向上
型崩れを防ぐ
型崩れを防いでシルエットを美しく保てるのは、裏地があるからこそです。裏地がなければ、摩擦による表地の消耗が激しく、型崩れの原因となります。裏地によって摩擦を減らし、表地のシルエットやドレープ(折り目)を保てれば長く愛用できるため、コストパフォーマンスの向上にもつながります。
さらに、裏地がなければオーダースーツを着用した際に生地がペラペラに見えるため、相手にネガティブな印象を与えかねません。裏地による厚みは、誠実さや説得力を演出できるでしょう。
着脱しやすい
オーダースーツの着脱がスムーズになるのも裏地が必要な理由です。特に、夏場や季節の変わり目はジャケットを着脱する機会が多いため、ストレスなくスムーズに行いたいものです。
裏地には摩擦を起こりにくくしたり、着脱時の滑りをよくしたりする効果があります。着脱時に引っかかりやすい背中や袖の摩擦が少なくなれば、おのずと着脱しやすくなり、ストレスも減るでしょう。
さらに、静電気を防ぐ生地や吸湿性や放湿性に優れた生地を選択すれば、着心地のよさも得られます。
汚れや変色を防ぐ
汚れや変色を防いで表地本来の魅力を長持ちさせるのも、裏地の機能です。裏地のないジャケットを長時間着用していると、内側には湿気がこもるため、繊維が傷んで表地に負担がかかります。その結果、汚れの付着や変色を起こし、オーダースーツの寿命短縮につながってしまいます。
裏地は吸湿性や放湿性が高いため、汚れや変色、さらに表地へのダメージを減少させられます。素材選びに注意し、通気性や吸湿性に優れた生地を選択すれば、長時間の着用でも快適に過ごせます。冬物スーツの場合は、静電気防止素材を選択肢に入れてもよいでしょう。
ジャケットの透け防止
裏地には、表地が透けるのを防ぐ効果が期待できます。表地の種類によりますが、裏地がないオーダースーツは薄く、中のシャツが見えてしまう可能性があります。さらに、裏地がなければ摩擦によって生地が傷み、よりシャツが透けやすくなる原因となるため注意が必要です。
裏地は表地の透け防止となるだけでなく、表地本来の美しさを際立たせる役割も持ち、スマートな着こなしの助けとなります。
ファッション性の向上
裏地は機能面に優れていますが、ファッション性の向上も、裏地が果たす役割として外せないポイントです。裏地が人の目につく場面は限られており、表地のように目立つ部分ではありません。だからこそ、さりげないおしゃれが楽しめたり、個性をアピールできたりします。
ビジネスシーンでオーダースーツを着用する場合は、表地の色味はある程度限られます。しかし、裏地の自由度は比較的高く、好みの色や柄を選択可能です。既製品の裏地は、表地と同系色が使用されるケースが多く、裏地で遊び心や個性を出せるのはオーダースーツならではの楽しみといえるでしょう。
オーダースーツの裏地の種類
オーダースーツの裏地は、範囲によって、以下3つの種類があります。
- 総裏
- 背抜き
- アンコン
それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説するので、順にチェックしていきましょう。
総裏
総裏は「ジャケットの裏側全体に裏地を付けた仕様」を指します。オールシーズンの着用が可能のため、特別な理由がない限りは総裏の選択が一般的です。
総裏のメリットは、ファッション性やスムーズな着脱の効果が高い点です。内側すべてに裏地が付いているため、シャツとジャケット間の摩擦を防いで、肘や背中も引っかかることなく着脱できます。
さらに、丈夫なため型崩れもしにくく、美しいシルエットが保てます。つまり、裏地自体のメリットである「スムーズな着脱」「型崩れや汚れ・変色の防止」の効果をもっとも発揮できるのが総裏です。
一方で、全面に裏地が付いているがゆえに、夏場は暑いと感じやすいでしょう。特に、ポリエステル素材の場合は吸湿性が低いため、蒸れによる臭いの原因となってしまいます。総裏を選ぶ際には、裏地の素材選びには十分に注意が必要です。
背抜き
背抜きとは「背中から下の裏地を抜いた仕様」を指し、総裏に次いで選ぶ方が多い仕様です。肩甲骨あたりから下が抜かれているだけで、そのほかの部分には総裏同様に裏地が付いています。春から夏にかけて着用したい方におすすめのタイプです。
背抜きのメリットは、涼しく軽い点です。総裏に比べて裏地が少ない分、通気性に優れて快適な着心地となります。ムレやすい背中部分の通気性が良くなるのは、汗をかきやすい方や夏用のスーツを仕立てたい方にとっては大きなメリットといえます。さらに、裏地が少ないため軽く、総裏ほどの重量感はありません。
一方のデメリットは、型崩れしやすく傷みやすい点です。裏地が全面に付いていないため摩擦が起こりやすく、型崩れや傷みの原因となります。さらに、薄手の表地で仕立てた場合は、シャツが透けてしまう可能性があります。背抜きでオーダースーツを製作する場合は、やや厚手で透けない表地の選択がおすすめです。
アンコン
アンコンとは「裏地を完全になくした仕様」を指します。「非構成的な」との意味を持つ「アンコンストラクション・ジャケット」の略で、裏地だけでなく、肩パットや芯地なども使用しないのが特徴です。ビジネスとカジュアルのどちらにも対応しているため、幅広いシーンで着用できます。
アンコンのメリットは軽くて動きやすい点です。裏地がないため軽快な印象になるだけでなく、動きに制限がかからないため、ストレスフリーで着用できます。そのため、表地のストレッチ性を直で感じられるでしょう。さらに、背抜きより通気性がよいため、夏場の着用にぴったりです。
一方デメリットは、ほか2種類と比べて耐久性に劣る点です。裏地には型崩れや汚れ・変色を防ぐ効果がありますが、アンコンでは裏地のメリットは得られません。
サイズが合っていないジャケットの場合はシワができやすいため、アンコン仕様にする際は、特にサイズ調整は重要なポイントです。取り扱いにも気を配り、日頃からハンガーにかけたり、こまめにシワ取りをしたりしてお手入れするようにしましょう。
オーダースーツの裏地の素材
オーダースーツの裏地は、素材選びも妥協できません。裏地で主に使用される素材は以下の3つで、それぞれ特徴や性質が異なります。
- 合成繊維
- 天然繊維
- 再生繊維
各素材の違いを把握し、自分の理想とする着心地やでき栄えを実現する参考にしてください。
合成繊維
合成繊維は、裏地で使用されるもっともポピュラーな素材です。ポリエステルをはじめとする合成繊維は耐久性が高く、メンテナンスしやすい特徴があります。安価で手に入るため、無料で選択できる場合がほとんどです。
一方で、通気性や吸湿性が低い点はデメリットといえます。汗を吸いにくいため蒸れやすく、特に夏場はデメリットを感じやすいでしょう。逆に、冬場は静電気が起こりやすい性質も併せ持つため、気になる場合は避けた方が無難です。
天然繊維
3種類の中でもっとも高級な素材が天然繊維です。シルクを代表とする天然繊維は肌触りのよさとツヤ感が大きな魅力で、高級感を演出できます。吸湿性に優れているため、梅雨から夏にかけての湿気が多い時期でも快適に着用でき、冬場でも静電気が起こりにくいのがメリットです。
ただし、天然繊維はデリケートなため、耐久性に劣ります。摩擦に弱かったり、シミができやすかったりする特徴があるため、注意が必要です。日頃のケアや定期的なメンテナンスが必要なため、忙しいビジネスパーソンにとっては手間だと感じる方も多いでしょう。また、高額になりやすいのもデメリットといえます。
再生繊維
天然繊維を加工して作られた再生繊維は、薄手で軽く、ツヤ感があるのが特徴です。代表格にはレーヨンとキュプラがあり、特にキュプラは人気のオプションでもあります。ほか2種類のメリットを併せ持った素材で、吸湿性や耐久性、放湿性に優れています。
さらに、ツヤ感があり肌触りがよいため、静電気が起こりにくいのも特徴のひとつです。再生繊維を選択すれば、年中通して快適に着用できるでしょう。
デメリットとして、濡れるとシワになりやすい点があります。雨天時には着用を避け、再生繊維の使用されていないジャケットを着用すれば、生地が傷まず長く愛用できます。
オーダースーツの裏地の織り方
一見違いがないように見えますが、裏地の織り方は、主に以下の5種類があります。
- 平織
- 朱子織
- 綾織
- 甲州織
- ジャカード織り
織り方によって見た目も特徴も異なるため、順にチェックしていきましょう。
平織
平織(ひらおり)はもっとも基本的かつ単純な織り方で、緯糸(よこいと)と経糸(たていと)を1本ずつ順に交差させて織られます。「三原(さんげん)組織」と呼ばれるポピュラーな織り方の1種です。組織点と呼ばれる糸が交わる点が多いため、ハリのある耐久性に優れた裏地に仕上がる特徴があります。
丈夫で摩擦が起きにくいメリットがあり、加工しやすい点も含めて非常に実用的です。組織点が多い生地は隙間が空きやすくなるため、通気性がよく、夏場でも快適に着用できます。伸縮性がなく厚手の生地には適さないデメリットもありますが、糸の太さや色によって、さまざまな織り方ができるのは平織ならではの魅力です。
朱子織
朱子織(しゅすおり)は三原組織の1種で、5本以上の緯糸と経糸を組み合わせて順に交差させる織り方です。緯糸・経糸を問わず4:1で順に織る「5枚朱子」が一般的で、8枚や10枚などの織り方も存在します。
光沢感と滑らかな肌触りが特徴で、伸縮性が高いためシワになりにくいメリットがあります。高密度のため、表地が薄手の場合、透け防止に役立つのも特徴のひとつです。朱子織で代表的なサテンを思い浮かべると理解が深まるでしょう。布地の厚さから、冬物のコートに適しています。
ただし、糸が浮いている部分が多いため摩擦に弱く、ほかの織り方よりも引っかかりやすい点はデメリットとして挙げられます。着脱の際に、多少気を遣う必要があるでしょう。
綾織
綾織(あやおり)は、平織や朱子織と並ぶ三原組織の1種で、2本あるいは3本の経糸と緯糸1本をずらしながら織る方法です。組織点が斜めになるため、斜文織(しゃもんおり)とも呼ばれています。オーダースーツで主に採用されているのは「三つ綾」と呼ばれ、経糸2本を上に、緯糸1本を下に交差させた織り方です。
朱子織と同様に糸が浮く部分が多く、光沢感としなやかさが特徴です。組織点が少なく高密度で製作できるため、厚手でストレッチ性があり、シワになりにくいメリットがあります。オーダースーツ以外では、デニムやジャケットで採用される織り方としても有名です。
一方デメリットとして、摩擦に弱く、やや耐久性に劣る点が挙げられます。
甲州織
甲州織(こうしゅうおり)とは、山梨県の郡内地方で生産された織物で、400年以上の歴史を誇る伝統的な織り方です。江戸時代から質の良い絹糸と水質に恵まれた山梨県では「甲斐絹(かいき)」と呼ばれる高価な正絹が有名で、甲州織のルーツとなっています。甲斐絹の産地である郡内地方で織られた甲州織は、立体感と軽さが特徴です。
先に糸を染色してから織るため、非常に繊細で複雑な柄や模様をあしらった生地を製作できます。1日に生産できる量が少なく希少な織物で、主にフルオーダーの裏地として重宝されています。
ジャカード織り
ジャカード織りとは、フランス人のジョセフ・ジャカードによって発明された「ジャカード機」で織る方法です。ジャカード織りでは、穴の開いた紙である「紋紙」を用います。デザインに沿った紋紙を前もって製作し、機械が穴から経糸を引き上げて織るため、複雑で繊細な柄も表現できます。
先に染色した糸を織り上げるため色落ちしにくく、プリント加工では生み出せない立体感と高級感が魅力の織り方です。しかし、非常に繊細な織り方のため、時間とコストを要する点に留意しておきましょう。
オーダースーツの裏地の選び方
オーダースーツの裏地は、表地ほどではないものの種類が多数あるため、迷ってしまう方も多いでしょう。そこで、裏地の選び方である以下3つを順に解説します。
- 同系色を選ぶ
- 表地とは異なる柄・色を選ぶ
- 季節に合わせて選ぶ
店舗ごとに取り扱っている裏地は異なります。店舗のホームページに裏地の一例が載っている場合もあるため、気になる店舗があればチェックしてみるとよいでしょう。
同系色を選ぶ
どの裏地にするか迷った場合は、表地と同系色の生地を選べば間違いありません。たとえば、表地がネイビーなら裏地もネイビーまたは濃いブルー、表地がグレーならば裏地は濃さの異なるグレーなどです。
色のトーンを揃えると統一感があり、上品な印象を与えます。既製品でも、表地と同系色の裏地が使用されているケースがほとんどです。
表地とは異なる柄・色を選ぶ
表地とは異なる色や柄を選んでカスタマイズを楽しめるのは、オーダースーツならではの魅力です。裏地は個性を出せる部分でもあるため、自分の好きな色や柄を選ぶのもよいでしょう。異なる柄を選択する際は、同系色を選べば個性を出しつつもすっきりした印象になります。
たとえば、表地がグレーなら裏地はオレンジ、表地が無地なら裏地はストライプ柄などです。人と被らない、自分だけのオーダースーツを製作したい方におすすめです。思い切ってドット柄やペイズリー柄を選べば、上級者のおしゃれが楽しめます。
季節に合わせて選ぶ
オーダースーツを季節ごとに製作する方には、裏地も季節に合った色を選ぶのがおすすめです。たとえば、夏用ならブルーやライトブルーなどの爽やかな色を、冬用ならブラウンやボルドーなどの深い色を選ぶと季節感を演出できます。
また、季節のイメージに合う柄を選んでもよいでしょう。爽やかな印象のストライプは夏用、深い色合いのペイズリー柄は冬用などです。色と柄の組み合わせで印象は大きく異なるため、着用シーンや好みに合わせて選択してください。
オーダースーツの裏地の組み合わせ例
オーダースーツの裏地に迷った際は、以下の表に記載した組み合わせを参考にしてみてはいかがでしょうか。定番の組み合わせから遊び心ある組み合わせまで、おすすめを紹介します。
表地 | 裏地 | 特徴・印象 |
---|---|---|
ブラック | レッド | おしゃれで華やかな印象 |
グレー | ブラウン | 相性抜群で無地だとなおよい |
グレー | ピンク | センスがよく遊び心を演出できる |
チャコールグレー | ボルドー | 大人っぽさや重厚感を演出できる |
ネイビー | ブルー | 定番ですっきりまとまった印象 |
ネイビー | オレンジ | 知的でありながらもカジュアルな印象 |
ネイビー | グレー | 上品で大人っぽい印象 |
キャメル | ボルドー | 秋から冬におすすめ |
ブラウン | ダークグリーン | チェック柄で遊び心をプラスしてもよい |
チェック柄 | ブラック | 暗めの色だとメリハリが出る |
なお、生地の色は明度や彩度によって印象が異なる可能性があります。色見本で表地との相性をチェックしておくとイメージ通りの組み合わせを選択できるでしょう。
Suit Yaで裏地にこだわったオーダースーツを作ろう
オーダースーツの裏地には、ファッション性と機能性が向上する効果が期待できます。具体的には、好みの色・柄を選択できたり、型崩れや汚れ・変色を防止できたりする点などです。
人目に触れる機会は少ない裏地ですが、種類豊富な生地から好みの1点を選択できるのは、オーダースーツならではの魅力です。表地との組み合わせで印象が異なるため、個性を出せる部分でもあります。店舗によって取り扱っている裏地は異なるため、事前にチェックしておくとよいでしょう。
Suit Yaで取り扱っている裏地は30種類を超え、定番カラーから個性豊かな柄もの、人気のキュプラまで種類豊富です。柄ものはストライプやペイズリー、チェック柄などを取り揃えています。一部の柄ものを除き、ほとんどの生地はポリエステルを使用していて耐久性に優れるため、メンテナンスが簡単に済みます。
多くの裏地は無料で選択できるため、費用をかけずにこだわったオーダースーツの製作が可能です。オーダースーツを細部までこだわりたい方は、ぜひSuit Yaをご検討ください。
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